Web Press 山の上 

個人英日翻訳アーカイブプロジェクトなど。

2018年の夏、なにもかもが嫌だった。すでに大学にはあまり行かなくなっていて、バイト先が自分が社会と繋がっている唯一の居場所だった。多くて週に5日、朝2時ごろまで働くと、もちろん朝は起きれなくなる。その年の春に恋人と別れてからずっとそんな感じだった。別れて1週間は、から元気で動けた。ふと数週間前、あるいは数ヶ月前が懐かしくなった。

 

その時は相模原市に住んでいた。新宿から直行で行ける果てで、私は自宅に1人、家に篭り続ける。静かな街に、隣町から来た男たちの怒声がよく聞こえる、最悪な土地だった。早く、とにかくここを離れたいけど行くあてはなかった。

 

そういう時には勢いだけで航空券を取るのがいい。せっかくどこに行っても1人なのだからそれならより遠くへ行くべきだと当時すでに勘付いていた。だからアメリカに行く。確かあれは2回目の渡米だった。1回目でホームシックになったのを完全に忘れて、とにかく現実を有耶無耶にするために、一番安い航空券を選ぶ。乗り換えの数は出会いの数で、出会いの数は運命の数だ。

 

しかし、乗り換えの数はリスクと比例する。例えば飛行機に乗り遅れるとか。アメリカの中心、コロラド州デンバーという街で、時差を一時間見間違えて飛行機は出発してしまった。目標はアメリカ南部のアリゾナ州フェニックスなのだが、そこに向かう飛行機は翌日10時まで無いので待つしかない。空港のカウンターでおじいさんが親切に、無料で振替便の予約を承ってくれたのは嬉しかった。そのおまけにホテルを紹介してもらったのだが、名前を検索するとそのホテルは"ホームレス保護施設"と書いてあったので、なんだか悔しくて、そこには泊まらない事に決めた。